水には「軟水」と「硬水」があるのは1度くらい聞いたことがあるかと思います。日本の水は軟水で海外は硬水が多いということまで、すでに知っている人もいるかもしれません。
でも、なぜ軟水や硬水と呼ぶのかまで、きちんと説明できる自信はありませんよね。
ここでは、水の硬度についての基礎知識をご紹介した上で、硬度に関する疑問を徹底解剖していきます。
水の硬度って何?
硬水や軟水という言葉を聞いたことがあると思いますが、お水の硬度がどんなものなのか考えたことはありますか?
「水の硬度」とは、水の中に含まれるミネラル類のうち、1リットルの水に溶けているカルシウムとマグネシウムの含有量から算出された数値のことです。
硬度の算出基準や分類基準は国によって異りますが、日本では次の式を使って算出するのが一般的です。
簡単に説明すると、カルシウムとマグネシウムの含有量が比較的多く含まれている水を「硬水」、少ないものを「軟水」と呼びます。そして軟水と硬水の中間にあたるのが「中硬水」です。
硬度は生活上のあらゆることに影響
「カルシウムとマグネシウムの含有量なんてどうでもいい」と思う人もいるかもしれません。でも、水の硬度は次のようなものに影響を与えます。
- 石鹸の泡立ちやすさ
- お茶やコーヒーの味
- 水の口当たりや喉ごし
- 体内への吸収のしやすさ
- ダイエット
同じお茶を入れるにしても、硬水と軟水とでは味がまったく違ってきます。嘘だと思うなら、コンビニで軟水と硬水を買ってきて、お茶やコーヒーを淹れて比較してみてください。
このように、水の硬度は生活をする上であらゆることに影響を与えます。何も考えずに飲むと、お腹の調子が悪くなることもあります。たかが水だと思わずに、水を選ぶときには軟水と硬水の違いをしっかりと把握した上で選びましょう。
それぞれの水の含有量は?
水の硬度は、1リットルの水に含まれるカルシウム・マグネシウムの含有量のことだとお伝えしました。そうなると、軟水や硬水にはいったいどれくらいのミネラルが含まれているのか気になりますよね。
硬度の分類は国ごとに違いますので、日本の基準とWHO(世界保健機関)の基準は一致しません。例えばWHO(世界保健機関)の基準は次のようになっています。
WHO(世界保健機関)の基準
軟水 | 硬度120mg/L未満 |
---|---|
硬水 | 硬度120mg/L以上 |
これに対して、日本の基準は次のようになっています。
以下は日本基準の水の分類になります。
軟水(硬度:1~100mg/L)
軟水は硬度が1〜100mg/Lの水を指します。日本の水は沖縄などの一部の地域を除いて、ほとんどがこの軟水だと言われています。
硬水や中硬水に比べると、ミネラル分は少なめですが、日本人が一番慣れていて飲みやすい水になります。
中硬水(硬度:100~300mg/L)
軟水と硬水ちょうど中間にあたるのがこの中硬水です。硬度が100〜300mg/L程度の水を指します。
ミネラルが程度に含まれており、飲みにくいといわれる硬水に比べると、日本人でもあまり抵抗なく飲める水です。
硬水(硬度:300mg/L~)
硬水は硬度が300mg以上の水を指し、ミネラルを豊富に含んでいます。
軟水を飲みなれている日本人にとっては、のどごしが硬く感じられ、飲みにくさを感じる人が多いという特徴があります。
それぞれの水の特徴は?
軟水、中硬水、硬水に含まれるミネラルの量は把握できたかと思いますので、次はそれぞれの水にどのような特徴があるのかご紹介していきます。
軟水(硬度:1~100mg/L)
- 軟水は口当たりが柔らかくさっぱりしている
- 緑茶や紅茶、コーヒー、ウイスキーなどの色や風味を出しやすい
- 昆布や鰹だしなどの旨み成分を引き出しやすい
- 煮炊きの多い日本料理に向いている
- 石けんや洗剤が泡立ちやすい
中硬水(硬度:100~300mg/L)
- コーヒーや日本茶、紅茶を淹れるときや、ダシ取りにも適している
- 鍋物、しゃぶしゃぶ、パスタをゆでる時などに向いている
- 肉の煮込みなど臭みを抑え、煮崩れを防いでくれる
硬水(硬度:300mg/L~)
- のどごしは少し硬めで、しっかりとした飲みごたえがある
- 緑茶を入れる際に色や風味が出にくい
- 肉の煮込み料理やスープストックに適している
- 日本料理にはあまり適さない
- 石けんや洗剤が泡立ちには向いていない
- 新生児は腎機能が弱いのでなるべく硬水は与えないほうがよい
- ミネラルが多く含まれている
- スポーツ後やダイエット中のミネラル補給に適している
- 妊娠中のカルシウム補給にも適している。
日本の水道水は?
日本の水道水の硬度は50~60mg/Lです。ミネラル含有量が100mg以下になると軟水に分類されますので、日本の水道水は軟水ということになります。
ただし、水道水の硬度は地域によっても大きく異なってきます。硬度の高い地域と低い地域で分けると次のとおりになります。
硬度が高めの地域
関東、四国、九州、沖縄地方で硬度が高めです。具体的な地方としては、東京、神奈川、群馬、滋賀、福岡、熊本、千葉、埼玉、沖縄の硬度が高い傾向にあります。
関東、四国、九州地方の硬度が高い理由としては、関東ローム層や九州の火山地帯が影響していると考えられています。
また沖縄は高い山が少なく、石灰岩の地層で水が濾過されるため、どうしてもミネラルを多く吸収してしまいます。ただし、沖縄でも地域ごとに硬度に差があり、硬度を下げる施策も行われていますので、以前ほど硬度は高くありません。
硬度が低めの地域
硬度が低い軟水を飲めるのは、北海道、秋田、宮城、新潟、愛知、島根です。北海道や東北は、雪解け水が川となって水道水として利用できるため、地層のフィルターでミネラルを吸収することがなく、硬度は低めとなっています。
日本各地の水質データは水道水質データベースにアクセスすることで簡単に調べられますので、お住いの地域の硬度がどれくらいなのかチェックしてみてください。
海外の水道水の硬度は?
それでは海外の水道水の硬度はどのようになっているのでしょうか?留学や赴任、出張などで海外を訪れる際には、やっぱり水事情が気になってきますよね。
アメリカ・カナダ
アメリカ・カナダは非常に国が広範囲であるため、地域によっての差があります。ニューヨーク、サンフランシスコ、ヒューストンなどは主に軟水で、日本と同じ硬度もしくは日本よりも低い地域もあります。
ロサンゼルス、ワシントン、トロント、シカゴ、オーランドなどは日本の関東地方と同等です。
一方でラスベガス、フェニックス、セドナ、グランドキャニオン、セントルイスなど内陸部の地域では、硬度は高めになります。簡単にまとめると、アメリカやカナダでは内陸部に位置する一部の地域を除けば、日本と変わらない硬度の水道水になっています。
ヨーロッパ
イギリスのエジンバラ、スペインのマドリッドなど、まれに硬度が低い地方もありますが、全体的にみて硬度は日本より硬度が高く、硬水に分類される地方が多くなります。
硬水であるため石けんが泡立ちにくくなり、石けんでの洗濯が難しいのに加え、洗顔後に石けんカスが残りやすいため、旅行中に肌の調子が悪くなってしまう人も多いようです。
東南アジア・インド・中国・韓国
ヨーロッパと同様、日本に比べてかなり硬度は高めです。
最近人気の観光地でもある台湾はやや硬度が高めの軟水です。地域によって違いがありますが、日本人が行くことの多い台北は硬度が37mg/Lなので、日本よりも硬度は低めです。
オーストラリア
オーストラリアもとても広い国であるため、地域によって硬度は大きく異なってきます。メルボルンやパースには大きな川が流れており、豊かな水源があるため硬度は日本より低めです。
日本からの旅行客が多いシドニーも、日本と同等か低いくらいの軟水になります。
日本の市販のミネラルウォーターの硬度
スーパーやコンビニなどで購入することの多いミネラルウォーターですが、ミネラルウォーターも銘柄によって軟水と硬水に分かれます。よく売られているミネラルウォーターの硬度を見ていきましょう。
市販のミネラルウォーターの銘柄
よく売られているミネラルウォーターを、軟水と硬水に分けてみました。
- クリスタルカイザー(硬度34mg/L)
- いろはす(硬度43mg/L)
- ボルヴィック(硬度60mg/L)
- エビアン(硬度304mg/L)
- コントレックス(硬度1648mg/L)
軟水と硬水の違いをあまり実感したことがなく、よくわからないという方は、上記の分類を参考にして、その違いを実感してみてください。
飲み比べてみると、軟水は口当たりがやわらかくさっぱりした感じ、硬水ではのどごしが硬くしっかりとした飲みごたえがあります。飲み比べてみると、それぞれの特徴を実感できるはずです。
硬水のダイエット効果?
硬水にはたくさんのミネラルが含まれているため、飲むことで次のような効果を得られる言われています。
・代謝の促進
・脂肪の吸収を抑制
・便秘が改善
いずれも体質改善につながるため、ダイエット飲料として飲まれることもあります。
しかし、成人でもあまり飲みすぎると、胃腸に負担をきたしてしまったり、下痢などの体調不良になったりする恐れもあるので、飲む量には注意が必要です。
水をたくさん飲むことで期待できるメリット【健康効果と体質改善】
軟水器ってなに?
軟水器という言葉を聞いたことがありますか?浄水器は日本で普及していますが、軟水器は聞いたことがないという方がほとんどかと思います。
蛇口をひねれば、軟水が出てくる日本人にはあまり馴染みのない設備ですが、ヨーロッパをはじめとして、水の硬度が高い地域では、多くの家庭で水を軟らかくするための軟水器を使用しています。
日本でも軟水器が必要?
日本は平均的にほとんどの地域が軟水ですが、先ほど説明したように地域によっても大きく硬度は異なってきます。
硬度が40以下の地域であれば、洗濯、入浴、洗顔など問題なく石けんが使えるため、日常生活において軟水器は必要ありません。
また、石けんではなくボディシャンプーや洗顔料を使っている人も、大きな差はないので不要です。
日本で軟水器を使用している理由としては、水道水でのトラブルを感じていたわけではなく、水の硬度を低くすることによって石けんカスが残りにくくなる、というメリットを求めて使用を始めている人が多いそうです。
実際に軟水器を導入した人は、次のような効果を実感しているようです。
- 洗顔後に石けんカスが顔に残りにくくなって肌トラブルを防いでくれる
- 髪がさらさらになる
- 洗濯物もキレイに仕上がる
- 食器がピカピカになる
日本で生活する上で「必需品」ではない軟水器ですが、少しでも快適な生活をするために軟水を使ってみたいという方は、軟水器のご購入をおすすめします。
水道水が軟水ってことは飲んでいいってこと?
生活していく上で便利な水として「軟水」が注目されていることがわかってきたところで、よくある質問をひとつご紹介したいと思います。
それは「水道から軟水が出るということは、飲料水として適しているということ?」という疑問です。確かに、軟水は口当たりもやわらかくさっぱりとしており日本人好みで、和食やお茶を作るのにもぴったりなお水であるとご紹介しました。
しかし、水道水はいわば「生活用の水」であり、「飲料水」ではないということを頭にいれておく必要があります。
水道水って飲むと危険なの?
水道水には、塩素やトリハロメタンなどの化学物質が含まれています。水の中に含まれている菌を取り除くため、浄水場で殺菌剤として使用されているため、これは仕方のないことです。
日本の水道水には残留塩素が0.1ppm以上という決まりがあります。これはしっかりと殺菌された水道水の証となっていますが、塩素は過剰摂取することで体に悪い影響を及ぼしますので、本当に安全なのか心配ですよね。
しかし水道水に入っている残留塩素やトリハロメタンは、一生飲み続けても体に害を及ぼすことないほど微量のため、過度に心配する必要はりません。
むしろ問題なのは、水道水ではなくマンションやアパートの貯水タンクです。水道水として貯水タンクに貯められた水が送られてくるわけですが、貯水タンクにコケが生えていたり、ネズミやカラスなどの生き物の死骸が入っていたりと、かなり不衛生な状態のものもあります。
マンションやアパートが貯水タンクを使用しているようなところは、どの頻度で手入れや検査を行っているのかなど確認するようにしてみてください。
浄水器やウォーターサーバーを利用してきれいな水を飲みましょう
最近は水についての意識も高まってきており、家電量販店で手軽にとりつけられる浄水器が販売されていたり、ウォーターサーバーも以前に比べて手軽な値段でうちに置くことができるようになったりと、家庭で綺麗な水が飲める環境づくりが簡単になっています。
水道水の怖さを知らないまま、水道水を常飲したり、赤ちゃんに飲ませるミルクを水道水で作ったり、炊飯や料理に浄水器を通していない水道水を使っていたりする場合は、家庭の飲料水の見直しをされてみることをおすすめします。
最後に
水は生活に密着しているとっても大切な資源です。日本の水は世界でもミネラル分の少ない「軟水」です。水道水も世界基準で見るととてもきれいですが、消毒のために大量の塩素が使用されてるため、飲料水としてはおすすめできません。
健康維持のためにも、浄水器やウォーターサーバーなどを活用して、綺麗な水を体に取り入れるようにし、快適な生活が送れるようにしましょう。