水道水が飲めるって特殊なの?海外と比べて日本の水道水が安全な理由

日本では水道水を飲めるのは当たり前のことなので、水道水をありがたく思う人なんていないかもしれません。ところが世界の9割の国は、水道水を飲料水として直接飲むことができないと言われています。

水道水を飲めるということは、日本が世界に誇れる素晴らしいところなのですが、実際はどれほどすごいことなのかピンとこないですよね。

そこで、ここでは日本と世界の水事情について、お話していこうとおもいます。

世界と比べて日本が贅沢に水を使える理由

日本では毎日お水を飲料水としてだけでなく、お風呂やトイレ、洗濯などに当たり前のように使っています。こんなにも安全なお水をふんだんに使えるのは、世界から見るととても羨ましいことのようです。

日本人1人が1年間で消費する水量は、世界のトップ10に入っています。

お風呂に浸かるという文化が関係しているせいもありますが、日本ではかなり水を贅沢に使っていることがわかります。

日本はどうしてこんなにも、ふんだんに水を使うことが出来るのでしょうか?ここでは、その理由について探っていきたいと思います。

日本はダム施設で水を確保している

当然のことですが日本もかつては、水道設備などありませんでした。

家ごとに井戸を掘ったり、共有の井戸から水を汲んで自宅まで持ち帰ったりしていました。

日本には四季があり、雨が降る季節と降らない期間がはっきりと別れているため、年間の降水量は多いのに、雨が降らない季節に水不足になります。水道設備がなかった時代は、その水不足により生活がひっ迫するという事態が頻繁に発生していました。

そんな水不足の対応として、水道施設の普及が大きく前進したのは、人工が急激に増えた高度成長期です。

水の供給が天候に左右されることのないようにと、先人達は水を溜めておけるダムを作ろうと考えました。

考えて計画しただけでなく、実際に高い技術力で頑丈なダム施設を作ることに成功しました。現在、日本には3000以上のダムがあります。

次に実行したのは、水をキレイにする浄水場施設の建設と、日本全国の家々に安全な飲料水が行きわたらせるための水道管整備でした。

文章にするとたった数行ですが、実際には多くの年数がかけられた大事業が行われ、私たちは今のように水に困ることなく生活が出来るようになったのです。

ダム施設が整っている現在でも、降水量によっては水不足になってしまう地域もありますが、昔とは比べものにならないくらい改善されています。

私たちが水を毎日安全に使えるようになったのは、先人達の知恵と高い技術力のおかげと言えるのかもしれません。

日本の水が安全に飲めるのはどうして?

日本の水がとても安全と言われているのは、安全な水を提供するために、水道法という法律によって水道水の品質と安全性を厳しく管理しているからです。

水道法による検査は、原水、浄水場、家の蛇口など場所を変えて、1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月と定期的な検査が行われています。検査項目は200種類くらいにのぼります。

私達が水道水として飲んでいる水は、浄水場と呼ばれる施設によって、水の汚れを全てキレイに取り除き、塩素という薬を使って雑菌を消毒するなどして、私たちが飲んでも大丈夫な状態になって水道水として届けられています。

安全な水を提供するだけでなく、水道局では水道管の安全性にも常に気を配っていて、検査も頻繁に行われています。

検査に使われる器具も高性能で、水道管が故障して水が漏れていれば、水道管が見えない地上からでも感知出来る仕組みになっています。

ただし、昔からの水道管が残っている地域では、老朽化や錆びなどの問題がまだ解決されていない部分も残っています。

水道水に独特の匂いを感じるのはどうして?

水道水から独特の匂いがするので水道水を飲むのに抵抗がある人もいますが、これは塩素と呼ばれる薬の匂いであることが大半です(他の匂いであることもあります)。

塩素は水の中の雑菌をやっつける大切な役割を果たしていますので、匂いが気になるからと入れないということは出来ません。

でも「こんな匂いがするものを、毎日塩素を体内に取り込んでも大丈夫なの?」と、疑問を持っている人もいるようです。

日本の水道法では安全性を確保するために、蛇口から出る水には必ず一定濃度以上の塩素が残るように法律で決められています。

残留塩素濃度は身体に害がない量に設定されていますので、基本的には毎日水道水を飲んでも大丈夫と言われています。

水道水から塩素の匂いを感じるのはきちんと消毒されているという証拠でもあり、日本の水道水が安全と強く言われている理由でもあります。

そのため匂いは仕方がないと諦めてしまうこともできますが、アイデア次第では、塩素の匂いを減らすことも可能です。

塩素については以下の記事で解説しています

塩素水道水に入ってる塩素の役割と残留塩素が身体に与える影響や除去する方法

塩素の匂いを取る簡単な方法

塩素の匂いが気になって飲むことができないという人のために、匂いを取り除く方法をご紹介します。

塩素の匂いを取り除く方法

  1. 浄水器の設置
  2. 水道水を沸騰させてから使う
  3. レモンの輪切りを入れておく

一番簡単な方法としては、蛇口に直接取り付けるタイプの浄水器です。

千円前後からと値段も手頃なものがたくさんあります。ただし一定期間使用したらフィルターの交換は必要になります。

水道水を毎回沸騰させるのは少し手間に感じるかもしれませんが、小さい子供さんがいる場合には、一番おすすめの方法です。

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沸騰させても匂いが取れない場合には、塩素以外の原因も考えられます。

その他にも、よく洗ったレモンの輪切りを、水道水の入ったポットなどに入れておくのもおすすめです。塩素臭さは改善されて、爽やかなレモンの香りがしてきます。

塩素は水道水の中の菌を繁殖させない役割を持っているので、塩素を取り除いた水道水は早く使いきるようにしましょう。

水道水の塩素の匂いは、水道を長時間使っていないときに強く感じやすいため、朝一番に使う時や長時間使用していなかったときは、水を10秒くらい出してから使用しましょう。これだけでも、塩素の匂いは改善できます。

水道水が飲める国水道水が飲める国は世界で15か国だけって本当?驚きの世界の水道事情

日本の水道水事情が変化している?

日本は蛇口をひねって出てきた水を飲料水として飲める、世界的にも珍しい国のひとつです。ところが、水道水を飲むという認識は、ミネラルウォーターの普及によってここ数十年で少しずつ変化してきているようです。

「水道水を飲みますか?」というアンケートを取ると、20~30%の人が飲料水としては使用しないという回答がかえってきています。

今後は水道水を飲まないという選択をする人が増えていく可能性もあるのかもしれません。

水道水とミネラルウォーターはどちらが安全?

ミネラルウォーターが普及していない時代に生まれた人にとって、水道水を飲むのが当たり前という認識があります。ところが、小さな頃からミネラルウォーターが身近にあった世代にとっては、飲み水は水道水という固定観念はありません。

また、健康志向が増えている昨今では、水道水に不安を感じて、敢えて水道水は飲まないという選択をしている人もいます。

水道水とミネラルウォーターはどちらが安全かという議論もされていますが、実際のところ、その決着ははっきりと付いていないのが現状です。

ミネラルウォーターの検査項目は18種類だけ

ミネラルウォーターは、水道水とは違って食品衛生法で管理されています。

使用する原水を年に1度検査するようになっていて、検査項目は18種類あります。水道水の検査と比べると10分の1くらいなので、かなり簡単な検査のイメージを持つかもしれませんが、ミネラルウォーターと水道水では根本的な扱い方が違いす。

分かりやすく言えば、ミネラルウォーターは自販機で売られているジュースやお茶と同じ扱いです。

飲むか飲まないかは個人の自由であり、毎日飲むものとして想定されていない嗜好品として扱われています。また、ミネラルウォーターはペットボトルなどで密閉されているので、水道水ほど厳しく検査をする必要もありません。

水道水は毎日必ず体内に取り入れる物として考えられていますので、身体に蓄積されていく成分を十分に検査する必要があります。そのため検査項目がミネラルウォーターの10倍に設定されているというわけです。

地域によって水の味は変わる?

日本の水の味はどこでも一緒だろうと思っている人もいるかもしれませんが、実は地域によって水の成分は少しずつ異なります。このため他県で水を飲むと、いつもと違うように感じることもあります。

水には主な成分として、カルシウムとマグネシウムが含まれていています。水1000mlの中に含まれるカルシウムとマグネシウムの量を表す数値のことを硬度と呼びますが、この硬度の数値によって水の飲みやすさが大きく変化します。

硬度の数値によって水は「硬水」「中硬水」「軟水」と3つに分けることができます。

水を見ただけで違いはわかりませんが、マグネシウムが多い硬水は喉をとおる時に違和感があるため日本人にはあまり人気がありません。

一般的に1000ml中の含有量が0~120mgまでは軟水に区別されます。日本全国の硬度数値の平均は20mg~90mgくらいと言われていますので、日本人が飲み慣れているのは軟水ということになります。

海外の水事情を見てみよう

海外に行っても、現地の水道水を飲んだらダメとよく言われますが、それは本当なのでしょうか?調べてみると先進国の水事情は日本以上に整っている国も多くあります。

水道設備には問題がなくても、水の性質上ミネラルウォーターが主流になっている国や、もともと生水を飲む文化がない国、といったように国が変われば水事情も大きく違います。

また、水道水ではなく蛇口から天然水が毎日飲める国もあるとか。日本では「日本の水道水が世界で一番」とよく聞きますが、世界の水事情が知られていないだけで、日本と同等かそれ以上の水道水を持つ国もあります。

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世界一水道水に厳しいのはアメリカ?

現在アメリカの水道水の基準は日本よりもずっと厳しく設定されています。水質検査では300以上のチェック項目があり、新しい細菌にも常に目を光らせています。

先進国として水の安全性を確保していますが、アメリカの水道水は硬水でサラリと飲めないので、飲みやすいミネラルウォーターを購入する人も多いようです。

水道水の硬度水道水の硬度とは?水道水・硬度の疑問を徹底解剖!

また、アメリカは州によっての法律が違いますので、アメリカ全土が共通して同じ基準の水質調査が出来ているわけでもないため、どの地域でも安全というわけではありません。

水道の普及率1位はヨーローッパ?

水道水が比較的安定しているのは、ヨーロッパの地域です。

ヨーロッパといっても40以上の国があり、その全ての国について説明することはできませんが、水道普及率90%の日本に対して、ヨーロッパでは水道の普及率100%の国がいくつかあります。

ヨーロッパの水道水には、日本のように浄水場の施設に運ばれることなく、山からの天然水が水道水として使われるケースもあります。

家の水道水から天然のミネラルウォーターが飲めるなんて、とても羨ましいですよね。

塩酸でお水を消毒などしていないので、水道水独特の匂いはありませんが、硬水の地域があったり、原水によっては何が溶け込んでいるかわからなかったりと不安要素も隠れています。

アジアの水事情は?

アジアで水道水が安心して飲めるのは、日本だけと言われています。

中国は元々一度沸騰させた水しか飲まないという文化がありますし、飲み物も食べ物も温かいものを取るようにしていますので、水道水を飲むということ自体抵抗があるようです

韓国では、水道水を直接飲む人はほとんどいません、水道水の水質的には問題ないのですが、塩素の匂いが日本よりもキツイため、誰も飲もうとしないというのが実情のようです。

また、韓国の水は硬水なので日本人には合いにくいという問題もありますので、レストランなどで水が出されることもありますが、あまりたくさん飲まないようにしてください。

水に対する意識は日本とまったく違う

日本の水道水は安全で当たり前という認識ですが、発展途上国では水道の普及率自体50%に満たないという国も多くあります。

そのため、毎日に必要な水を長い時間かけて汲んでくるということが、毎日の家事に組み込まれていたりします。

また水道の設備は整っていても、水質が硬水の国では「飲むなら軟水」という人が多く、ミネラルウォーターが主流という場合もあります。

日本のように水道の設備が整っていて、水質も軟水という恵まれた国は限られています。

もちろんヨーロッパのように、水道から天然の湧水が出てくるという羨ましい国もありますが、水に苦労せずに暮らせる日本の生活は、世界的にも幸せな環境にあります。

海外へ行くときは事前に水のチェックを

日本と世界の水事情についてお伝えしましたが、いかがだったでしょうか?日本の水道水はとっても安全と言われていますが、それは高い安全基準を設定し、それを維持するための検査を徹底して行っているためです。

最近では海外に行く前に、危険情報などをネットで確認してから行く人も多いのですが、これからは世界の水の情報も確認してから行くのが良いかもしれません。せっかくの海外旅行なのに、水でお腹を壊して楽しめないともったいないですからね。

水は命にも関わりますし、水道からいつでも飲めるという常識は海外では通用しません。

また、軟水の水を飲みなれた日本人にとって、硬水は体に合わないこともあります。水の安全性だけでなく、水の硬度も調べておくと安心です。

参考サイト

国土交通省水資源に関する世界の現状、日本の現状

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