ギャンブルやコンピュータゲームをプレイしたことがある方であれば、知らず知らずのうちに乱数発生器(RNG)を使ったことがあるでしょう。RNGは、かの有名なアラン・チューリングが初歩的なコンピュータへ搭載したときから半世紀以上もの歴史があり、今日のデジタル世界では非常に重要なツールとなっています。しかし、ある専門家チームがWeb3の新技術を転用し、その機能をさらに拡張改善しようとしています。それが量子乱数生成器(QRNG)。ブロックチェーンアプリケーションへの搭載が期待されています。
どうして機能改善が必要なのか
どうして正常に機能するシステムのアップグレードにこれほど多くの時間と労力を費やされるのか疑問に思うかもしれません。現在のRNGは非常に信頼性と安全性が高く、オンラインカジノゲームでも使用されるほどです。しかし、あまり知られていませんが、現在のRNGはハッキングが可能です。さらに、ハッキングの技術進歩に伴い、その危険性は高まります。
量子テクノロジーの台頭により、オーストラリア国立大学の研究チームは、新しいブロックチェーン技術と互換性のある安全なメカニズムの開発を開始したのです。これらはゲームプロバイダーや仮想通貨ウォレットなどのWeb3事業者が利用できるようになります。
開発チームメンバーの1人であるAaron Tranter氏は、Coin Telegraphとのインタビューで、現在の「疑似乱数生成器」のシステムにおける規則性と再現性の脆弱性を指摘しました。
一方、ブロックチェーン技術を用いた量子乱数発生器は、「量子力学の法則によって真の乱数であると証明されている」のだそうです。
量子乱数発生器の仕組み
QRNGは、量子ゆらぎを利用して予測不可能な乱数を弾き出すものです。量子力学の世界では、真空は「真空ノイズ」と呼ばれるものを引き起こす粒子が存在と非存在を繰り返していると捉えます。このノイズの発生は真に無作為的であり、現在ではレーザーのような装置を使って測定することができます。QRNGは、このノイズの揺らぎを測定して乱数に変換し、AWSのクラウドデータベースに送信します。そこからAPIゲートウェイで各ネットワークへ配信され、真の乱数生成器として利用することができるのです。ブロックチェーン技術により、システム改竄は不可能であるため、Web3の事業者やユーザーは安心してこれを活用することができます。
量子乱数発生器の活用
量子乱数発生器の恩恵を受けるのは主にWeb3事業者であることは先述の通りですが、この発明はテクノロジー界隈において広範な影響を与える可能性があります。
真乱数が必要となる最新のビデオゲームやカジノゲームに関しては、多くの企業が現行の乱数発生器では避けていたことですが、100%の信頼性と安全性を顧客に保証することができるようになります。特にギャンブル業界においては、消費者からの企業への信頼性を高めることになります。さらに、新時代のメタバースゲームでは、プレイヤーはゲーム内で様々なランダムチャレンジに挑戦することになりますが、この場合にもQRNGが活用できます。資源配置、業務割り当て、アンケートの実施、さらには社内投票システムの構築を望む一般企業でさえも恩恵を受けることができます。さらに、Tranter氏は、行政調査などサンプルの無作為抽出が必要となる業務にも応用が可能であると述べた。また、NFT(非代替性トークン)のファンであれば、QRNGを活用すればNFTの生成さえも真にランダムに行うことができるようになります。
ブロックチェーンによる未来
QRNGはブロックチェーン技術活用の一例に過ぎません。仮想通貨実現のために開発されたブロックチェーン技術は、今や産業全体を変革すると予測されており、2024年までに世界のブロックチェーンへの支出はおよそ190億ドルに達すると予測されています。
銀行や金融の分野では、ブロックチェーンのハッキング防止機能により、国際決済がより安全に行えます。例えば、サンタンデール銀行はリップル社のxCurrentサービスを利用して、顧客が国際送金を即日で行えるようにしています。ブロックチェーンは、取引仲介者を減らすことで合理的かつ効率的なプロセスを実現するのです。
セキュリティ面では、ハッキングだけでなく不正行為への安全性が高まります。ブロックチェーンの根幹をなす暗号化技術で、機密性の高い金融情報や取引記録を保護できるのです。これは、Know Your Customer(KYC)のようなすでに強力なセキュリティ対策の改善に役立ちます。
最も重要な恩恵は、気候変動との戦いにおいて、ブロックチェーンが計測や請求プロセスの基盤システムとなることで再生可能エネルギー取引の簡易化が望めるのです。つまり、乱数のランダム性を確保するだけでなく、世界を救うことにも繋がりえる技術なのです。